【受賞】本学位プログラム所属学生の受賞報告
本学位プログラム所属の宮澤優士さん(単著)が執筆した「サーファーが環境保全を訴えるとき―千葉県長生郡一宮町の事例から―」(『スポーツ社会学研究』31-1: 101-115, 2023)が日本スポーツ社会学会2023年度学生奨励賞(論文部門)第1位になり、同学会から賞状と副賞を授与されました。
この賞は、日本スポーツ社会学会が学生による研究を奨励するために毎年度『スポーツ社会学研究』に掲載された論文のなかから選考されるもので、今年度は6論文を対象に選考され、宮澤さんの論文が最優秀に輝きました。受賞理由は、以下になっています。
この論文は、サーファーによる環境保全運動をめぐって、サーファーと地域住民や専門家との間にどのような議論がなされ、何が問題とされ、どのような結論が導かれたのかを検討することで、サーファーによる運動の困難性および可能性を示そうとした意欲的な研究である。
研究目的の明解性や先行研究の検討の着実性、論文全体の論理性などが高く評価された本研究だが、とりわけ高く評価された点は、象徴的な会議の議事録や対象地のサーファー事情を深く知る代表的な住民を対象としているという点における研究方法の妥当性であった。また、そうしたサーフィンをめぐる当事者たちの主張を粘り強く拾い上げたという分析の着実性も高く評価された。
本論文の興味深い点は、サーフィンを環境保全運動の手段としてのみ注目するのではなく、サーフィンというスポーツの魅力を明らかにし、その魅力が環境保全運動が目指す理念とどのように結びつくのかを検討した点にある。そして、サーファーの経験知が工学的な知と衝突し、工学の側の変容をもたらしたという分析結果は非常にスリリングであり、かつ示唆に富むものであった。
本研究の知見は、今後、他地域の事例と突き合わされることで、より深まっていくと思われるので、研究の着実な進展を期待している。
文責:体育系 清水 諭(指導教員)
最終更新日時 : 2024年4月2日